「婚約指輪は給料の3ヶ月分」

プロポーズをした男性であれば

一旦はこのフレーズに悩まされたことがあると思います。

この「婚約指輪は給料の3ヶ月分」は

いったいどこから生まれたのかご存知ですか?

 

婚約指輪は給料の3ヶ月分?

婚約指輪は給料の3ヶ月分?

 

意外にもそれを知らない人が大多数です。

 

有名な結婚情報誌であるゼクシィの担当者さえ

誰も知りませんでした。

 

少なくとも、私がお付き合いした担当者や読んだ記事はそうでした。

 

このよくわからないけど、

とっても広まっている

「婚約指輪は給料の3ヶ月分」という相場感に関して、

私から皆さんにご説明したいと思います。

 

実は、この基準を作ったのは、デビアスと言う会社です。

デ・ビアス社は、ダイヤモンドをはじめとした

鉱物資源採掘・流通大手で、

一時期は世界のダイヤモンド原石流通量の

約80パーセントを牛耳っていた程の会社です。

 

そして、その広告を作成したのは、

ジェイ・ウォルター・トンプソン・ジャパンと言う大手広告代理店です。

1970年代後半のことです。

 

その時、この仕事を担当したのが、小池 玲子(こいけ よしこ)さんという
クリエイティブディレクター、アートディレクターです。

 

1970年代一般的だった結納という伝統において、

結納品として指輪を贈る人はだいたい半分でした。

このデ・ビアス社のキャンペーンが広がる前までは

誕生石が主流でダイヤモンドは7%に過ぎなかったのです。

その額は、その当時の給料でも約2ヶ月分が平均でした。

 

そこで、小池 玲子さんは

「ダイヤモンドは愛の証」

というコンセプトを設定し、様々なマーケティング手法を駆使します。

その広告が秀逸だったために、当時の日本人の脳の中には

まるで、重要な統計資料に基づくものか、

伝統的事実のように染み込んでいきました。

そしてそれは、親から子へ、

友人から友人へと伝えられていったのです。

 

当時、デートの定番コースは

映画→食事でした。

そして結婚適齢期にある男女が好みそうな

映画本編の前後には必ずと言っていいほど、

このデ・ビアス社の婚約指輪のフレーズ

「ダイヤモンド婚約指輪は給料の3ヶ月分が目安です」

が入ったコマーシャルが流されたのです。

 

では、なぜ、給料の3ヶ月分なのか?

複数の理由からその数字が決められたようです。

 

1つ目は、デ・ビアス社が日本で売りたいダイヤモンドの大きさ、品質と価格。

欧米では小さすぎて受け入れられにくい、

そこそこ品質が良くて小さいダイヤモンドが余っていたのです。

 

その販売先として、

戦後復興からめざましい発展をしていた日本を考えました。

「小さくて品質が良い」は日本人が好みそうだったのは

ちょうど良かったのだと思います。

その価格が当時の日本人の給料の3ヶ月分だったのです。

 

2つ目は、当時の為替レート。

ダイヤモンドも枠(指輪の台)の素材となるプラチナやゴールドも国際商品です。

そして、主な取引はUSドルでされています。

1970年代の円/USドルの為替は以下の通り。


円USドル相場推移グラフ

1971年8月まで 1ドル=360円の固定相場
1973年3月まで 1ドル=308円の固定相場
1973年4月以降 変動相場制 ただし、1985年までは概ね200~300円/USドル

だから、同じような広告を各国で作ったのですが、
日本では給料の3ヶ月、
ヨーロッパでは2ヶ月、
アメリカでは1ヶ月となったそうです。

 

3つ目は、当時の日本人の結婚適齢期の男性の平均的給料と

欧米の同世代のそれの違い。

2つ目とも関係し合いますが、

ドル換算してしまうと、

日本人の給料は3ヶ月分にしないと

1つ目の売りたい金額にならない額だったのです。

 

デ・ビアス社は、

婚約指輪はダイヤモンドに決まっていて、

それは給料の3ヶ月分が目安

という概念を日本人に埋め込むことに成功しました。

 

これは歴史上、

世界で最も成功したマーケティングキャンペーン、

キャッチコピーともいわれています。

 

このキャンペーンを(結果的に)強力に後押ししてくれたのが

当時アイドルとして大人気だった

郷ひろみだそうです。

それは、郷ひろみが

雑誌内で婚約指輪に関して語っている

以下の言葉だったと、

小池 玲子さんは著書の中で語っています。

すこしきつかったけど、
一生に一度のことだから。
思いきって、給料の3ヵ月ぶんを
ダイヤモンド婚約指輪にあててさ。
でも彼女の喜びを見たら、
自分がひと回り
大きくなったように感じた。
毎日、僕が飲んだり遊んだりするお金を
すこし控えれば買えるんだよ。
やっぱりこれからの一生、
彼女がずっと身につけるものだからネ。
僕の力で手に入る最高のものを
贈ろうと決心したのさ。
宝石店の人に聞くと、いま世間では
給料の3ヵ月ぶんぐらいが普通らしくてネ。
僕の予算の中で一番デッカくて、
質のいいものを、この手で選んで。
その足で彼女のところへいちもくさん。
ドライな彼女もホロッときてさ。
きっと僕からこんな
ダイヤモンド指輪をもらえるなんて
夢にも想ってなかったんだろうネ。
ブルータス1982年3月15日号より

 

では、今はどうでしょうか。

国際的に見た日本人の給料相場、為替レート共、

このデ・ビアス社がキャンペーンを行った

1970~80年代と大きく状況が異なっています。

当時と今の日本人の1ヵ月分の給料は同じではありませんよね。

もう日本の物価も月収も、欧米と肩を並べているのです。

 

残っているのは発展途上だった当時の日本人に

植えつけられたキャッチフレーズの記憶とその伝承だけと言うわけです。

 

ただ、

こうした事は今でも、

中国やベトナム、カンボジアなどで同様に起きているはずです。

国際商品の価格と月々手にできる収入の違いは

時代や地域によって必ず存在するからです。

 

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